画像で見る国旗勲章実物
まずは新しいタイプから見ていこう。最も多く目にするのはこのタイプである。国旗勲章は3階級からなる。一級は全体が金、二級は外側の5角形が銀で内側が金、三級は全体が銀である。一級及び三級では中心の金星、その周りの赤・青の七宝の十角形部分、本体の3つのパーツで構成されている。中心の金星と本体を、十角形部分を挟み込んでリベット留めしている。二級では金色の五角形部分が別パーツとなっているため、全部で4パーツとなっている。状態の悪いものでは、しばしばこのリベット留めされた部分が弱くなり、中心部がぐらついたりする。大きさは1級が約61mm、2級がわずかに小さく59mm、3級は少し小さくなって50mm。
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| 国旗勲章第1級 | 国旗勲章第2級 | 国旗勲章第3級 |
| fig.1 一般的な国旗勲章 | ||
初期国旗勲章
さて、この国旗勲章には様々なバリエーションが存在する。
まずネジ止めタイプからみてみよう。
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| ネジ留めタイプ 国旗勲章 第2級 |
ネジ留めタイプ 国旗勲章 第3級 |
| fig.2 初期の国旗勲章 | |
裏面の画像が入手できなかったのが無念だが、初めに掲示した新しいタイプものと比べて、一見して重量感があり、材質の違い(銀質)がわかる。また、全体がひとつのパーツからなっている点も違う。これらはソ連で製造されたと推定されるが、重量感と高級感漂う優れたツクリである。七宝の質も良さそうに見える。
余談ながら、北朝鮮勲章はひと頃よりはずいぶん取引価格も低下したとはいうものの、ネジ留め式の初期タイプは当然のことながら高価である。現行のタイプとは比べものにならない。そのくらい、出回っている数も質も全く異なるのである。なかには、ピン留めタイプの突起を削り取り、ネジを溶接してネジ留めタイプに仕立てた偽物も存在するので、購入時には念のため裏面のツクリは詳細に見ておいた方がいい。
時代としては、ネジ留め式→横ピン式→縦ピン式(シリアルナンバー入り)→縦ピン式(シリアルナンバー無し)という変遷が推定される(ただし、北朝鮮勲章の総括的書は未見であり、この他のバージョンが存在する可能性もある)。なお、国旗勲章のバリエーションについては別ページで紹介しているのでそちらを参照されたい。
ネジ留め式の勲章はソ連的であるが、それがピン式に変わっていく課程には、国産化という変化が影響しているかも知れない。
また、特に縦ピン式(上の写真参照)は、1955年に中国が勲章を制定したときに採用したタイプであり、この影響も想像されるのである。ソ連の勲章にはないツクリである(ソ連の影響が強いモンゴル等でも見られない)。
国旗勲章のケースと略綬
古いタイプの国旗勲章のケースや略綬は残念ながら未見であるので、手元にある新しいピンバックタイプのものについて見ていきたい。
ケースは濃紺色のアクセサリーケースのようなツクリ。
大きさは、2級が110×95×34mm、3級が112×78×29mmと、2級のほうがひとまわり大きい。
ふたを開けると、ふた内側に金色で国徽がプリントされている。
ケースには、勲章と略綬が上下に配置されており、それぞれケースのくぼみに収まるようになっている。略綬の大きさは34×11mm。略綬の色は両端が青、細い白線を挟んで内側が太い赤、その中にクラスに応じた数の黄色い線が入る。1級は1本、2級は2本、3級は3本。
![]() 左:3級、右:2級。ふたを開けたところ。 |
![]() 3級アップ |
![]() ふた内側にプリントされた国徽 |
![]() 略綬。上:裏面 下:表面 |
| fig.3 国旗勲章のケース、略綬 | |
中華人民共和国八一勲章との比較
北朝鮮勲章には、ソ連の影響と共に、中国の影響が明らかである。ここで中華人民共和国の勲章と比較を試みよう。
中国の叙勲制度は、ソ連式を基本的には踏襲しながらも、社会主義国としてはやや異色であるといえよう。勲章自体の種類が少なく(ただし奬章や記念章は多数ある)、授与対象は軍人だけであり、毛沢東や周恩来でさえ一つも勲章を所有していない。また、同じ勲章を繰り返し授与することもない。
fig.3として、1955年に制定された3級八一勲章をあげておく。金縁の付いたオレンジ色の布張りの箱に、国徽と「中華人民共和国 三級八一勲章」の文字が黄色く押されている。中には略綬と勲章が収められている。八一勲章は当時の最高勲章と言ってよい。材質は銀。
略綬は赤で等級の数だけ黄色い線が入る。1級が1本、2級が2本、3級が3本(北朝鮮のパターンと同じ)。北朝鮮の略綬に比べてやや小さく、24×9mmだが裏面のツクリをよく比べて欲しい。大きさは違えど、基本的なツクリが酷似しているのがわかる。
また、太い安全ピンを縦に取り付けたような裏面のツクリがさらに簡略化されたものが、ネジ留め式に取って代わったのが北朝鮮の勲章の変遷ではあるまいかと思われる。
また、勲章裏面に、勲章名や等級を刻印するパターンもソ連の勲章には見られないパターンで、中国・北朝鮮に共通する点である。
![]() 3級八一勲章ケース表面 |
![]() ケースふたを開けたところ |
![]() 八一勲章裏面 「中華人民共和国 三級八一勲章 一九五五 北京」 (下部シリアルナンバーにモザイク処理済) |
![]() 略綬裏面 |
| fig.4 中華人民共和国勲章の例 | |
新タイプ?「領綬国旗勲章」
国旗勲章には、さらに少し系統の異なったパターンのものがある。説明は後にして実物をまず紹介しよう。
![]() ![]() (国徽) |
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| ケース。茶色の塗料が塗られており、金色の金属製朝鮮国徽が取り付けられている。 | ケースを開けたところ。 ふた内側を2級の綬(黄線二本)が斜めに飾る。 茶色の台には、勲章が収まるくぼみがある。 |
ケース内部。 リボン、鈕(ちゅう)と正章、副章、略綬が納められている。 |
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| 略綬。下は裏面。 なんとプラスティック製。 |
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| 正章。下段は裏面。 青、白、赤のナショナルカラーのリボンを蝶結び状に飾り、国徽をかたどった金色の鈕(ちゅう)の下に正章を下げる。 正章は首から下げ、副章は胸に帯びる。 |
副章。下段は裏面。 さらに簡略化が進み、1つのパーツでできている。ピンも簡略化され、安全ピンタイプですらなくなっている。 正章も同じだが、中央の赤・青の十角の部分はまるで樹脂製のようにみえる。表面がややざらつき、色が鈍い。低温七宝か? |
正章本体とリボンの間をつなぐ鈕。 (ただしこういう名称でいいかどうかは不明。日本の菊花章や旭日章などにもあり、日本では「鈕(ちゅう)」と呼ばれているので便宜上そう呼ぶ) 金色の国徽である。 なお、3級では金色ではなく、銀色となっている。 |
| fig.5 領綬国旗勲章第2級 | ||
"Orders and Decolations of the Democlatic Peoples Republic of Korea"(1994)では、「Order
of the National Flag 2nd Class, Neck Order with Breast Badge」と紹介されている。この「首下げ」型の勲章は国旗勲章だけでなく、自由独立勲章、友好勲章にもあるようだ。サンプルが少なかったせいか、階級ごとにどう違うかまで説明がないのが残念だ。この本によれば、90年代から登場したという。まあどこまで確実な情報かよくわからないが、国旗勲章の新バージョンであることは間違いないだろう。細部をよくみてみると、かなり製法上の簡略化が進行していることからもかなり新しいものであることが伺える。
まあ、英語では確かにneck orderで事足りるのだが、我々がこの「首下げ勲章」をなんと呼んでよいか、若干悩むところである。日本の勲章にならえば、中綬章ということになる。ただし、中綬(首下げリボン)という呼称は、大綬(肩から提げる大きなリボン)に準じているからで、大綬もないのに中綬と呼ぶにはためらいがある。
で、ここでは中華民国の勲章を参考にして、領綬(「領」は首や襟の意)と呼ぶことにする。
これは余談だが、日本の勲章(例えば旭日勲章)は8クラスだが、中華民国の勲章(例えば雲麾勲章や宝鼎勲章など)は9クラスからなっている。
まず、日本の旭日勲章ではそれぞれの正式名称は次のようになっている。
勲一等旭日大綬章、勲二等旭日重光章、勲三等旭日中綬章、勲四等旭日小綬章、勲五等双光旭日章、勲六等単光旭日章、勲七等青桐葉章、勲八等白色桐葉章。
このうち、勲一等と二等が肩掛け式、三等が首下げ、四等以下が胸に付ける型である。旭日章の名前は、章本体を表現する名前(重光章とか双光章とか)であったり、リボンについての説明であったり(大綬章、中綬章、小綬章)、バラバラなのだ。もっとも、宝冠章や瑞宝章は勲何等、と頭につくだけで固有の名前がなくシンプルである。
中華民国のほうだが、雲麾勲章を例に挙げる。
特種大綬雲麾勲章、大綬雲麾勲章、雲麾勲章、特種領綬雲麾勲章、領綬雲麾勲章、特種襟綬附勲表雲麾勲章、襟綬附勲表雲麾勲章、特種襟綬雲麾勲章、襟綬雲麾勲章。
若干説明過剰の名称という気もしないでもないが、名前を見ればだいたいどういう形状のリボンであるかが想像でき、合理的である。「特種」とついているのといないのではリボンの色が異なる(基本的に「特種」のほうが華美な色)。また、「附勲表」というのは、リボンに丸い略綬が飾りについたモノ、と考えてもらえばよい。なお、ここでいう「襟」とは日本語とは微妙に異なり、「首周り」ではなく「胸元」くらいに捉えて欲しい。また、勲章本体上部に星が付けられており、星の数は一等から順に、3,2,1,3,2,1,3,2,1となっている。階級ごとのリボンの色までは覚えていなくても、リボンの形状と星の数で何等なのかは簡単に見分けることができる。
それはさておき。北朝鮮の領綬国旗勲章である。
基本的には北朝鮮勲章はソ連式の流れをくんでいるので、ソ連勲章にない肩や首から下げたりするタイプの勲章は元々存在しなかった。モンゴル、中国、あるいは東欧諸国にもない(断言するにはやや躊躇するが、基本的にはない、とはいえる)。
したがって、北朝鮮のこのタイプは、ソ連やその他の社会主義国からの影響ではなく、日本など、その他の国の影響を受けたものであろう。"Orders
and Decolations of the Democlatic Peoples Republic of Korea"によれば90年代から始まったそうだが、北朝鮮独自の路線といえそうである。
ただ、日本等と異なるのは、領綬勲章に副章が付属している点である。正・副の勲章があるのは大綬章で、領綬の場合はそれのみを首から下げるパターンが一般的なのだ。
実はこの点がよくわからない。
もしかして、正章と副章は同時に使用するのではなく、使用局面が異なるのであろうか。fig.3のような、綬のないただの国旗勲章と、領綬付きのそれはどう異なるのか。もしかして領綬勲章は外国人などに贈るためのものであろうか、などという推定もあるのだが、すべては不明である。
今後の研究が待たれる。