まだまだ続く!金日成バッジをめぐる報道の数々

 2002年10月19日。帰国中の拉致被害者を巡る報道は、まだまだ白熱している。18日は拉致被害者に日本のパスポートが交付。そのための写真撮影時に金日成バッジを胸から外した、という記事が各紙で報じられた。


 テレビでも金日成バッジについて詳しく報道されており、10月16日テレビ朝日系「ニュースステーション」や、10月19日NHK「週間こどもニュース」などで金日成バッジについて報道されたところである。
 また、10月19日のTBS系「ブロードキャスター」では、恵谷治氏が登場、自らのコレクション?を示しながら、彼らのつけている党旗章は各種ある金日成バッジの中でも最高級章であることを語っていた。でも恵谷さん、「心臓の上につけて忠誠を示す」と相変わらずおっしゃってますが、忠誠云々はともかく、バッジを左胸につけるのはごく普通の習慣でしょ?

 さて、一方新聞ではどうか。なかでも夕刊フジでは一面にバッジについて、バッジの拡大写真とともに記事を掲載したのがなんといっても目をひいた。
 実は、夕刊フジは平成10年8月21日、金正日バッジ登場という記事をやはり1面で報じたことがある。私は今もその記事を保存しているのだ。その以前にも「金正日バッジ発見!」ニュースは報じられてきたが、いずれもニセモノの疑いの強いものばかり。フジが写真付きで金正日バッジ確認のニュースを載せたのはかなり早い段階であったといえる。というわけで、夕刊フジ編集部には金(日成、正日)バッジに強い関心を持っている人がいるんじゃないかと勝手に疑っている。

 余談が過ぎた。記事を見てみよう。
「肉親の深い愛と友情、豊かな自然が洗脳を少しずつ解きほぐすが、胸にはいつも故金日成国家主席の赤いバッジが光る。40種以上に及ぶバッジの中でも、エリートが付けるもので、専門家は「朝鮮労働党員で、諜報(ちょうほう)機関に勤務する特権階級」と分析する。永住帰国を望む家族の悲痛な叫びとは裏腹に、5人は「人質」の子供らを気遣い、28日の離日を希望する。北の呪縛(じゅばく)を象徴するバッジを徹底検証する。」
専門家。どんな専門家だろう。たしかに労働党員である可能性は高いが、「諜報機関に勤務する」とまで断定できるのか?
素朴な疑問で恐縮だが、諜報機関に勤務する人が、外国へ行くのに「私は諜報機関員です」ということを明らかにするために、その証をつけていくだろうか。
その続き。
『5人が外出時に必ずつけるバッジを見ると、全体は赤い旗がなびいた形の枠組みで、真ん中の白丸部分に故金日成国家主席のスーツ姿が…。
 「あのバッジは『党旗章』と呼ばれるもの。5人が朝鮮労働党員になっているのはほぼ間違いない」とはコリア・レポート編集長の辺真一氏。
 なびく旗の中心の円内に背広姿の故金日成主席の肖像が描かれ、左上の隅には筆とハンマーと鎌(かま)の朝鮮労働党の紋章があしらわれたデザイン。』

金真一氏のコメントは常識的であり、うなずける。
 続いて恵谷治氏のコメント。
『北朝鮮の社会情勢に詳しいジャーナリストの恵谷治氏は「北では1970年代から全国民が何らかの肖像バッジをつけるようになったが、5人のものは、エリート階層を示している」という。
 党員については、「党旗章も一般市民や大学生が着用することがあり、一概に党員とは決められない」と指摘するように、その解釈は分かれ、意味づけにも謎が多い。』

と、ここではやや慎重なコメント。

『北朝鮮の国民が必ずつけているバッジの種類は多く、確認されているだけで40以上に及ぶ。
 形は円、長方形、扇、星型などがあり、大きさも大中小と様々だ。図柄の大半は故金日成主席ながら、表情やポーズ、服装も数パターンある。
 数は少ないが、金正日総書記や親子2人が並んで描かれたタイプも数種あり、「それらは総書記側近がつけている」(北朝鮮ウオッチャー)。』
 金日成バッジ全般について、このように書いているが、ひとつ気になった。
 おいおい。扇形のバッジってなに?間違いなく金日成社会主義青年同盟バッジを指しているのだろうが、あれを扇形というのはシロートである。
扇形に波打った赤旗なのだ。これはソ連のコムソモールバッジからの影響で、この業界では常識中の常識だ。
 それから、服装や髪型は別として、「表情やポーズ」にまで数パターンがあるって本当なのか?私が知る限り、ぐっと口を閉じ、前を見据えた表情以外見たことないが。他にどんな表情があるというのだろうか?あれば見てみたいので、ご存知の方はお知らせください。
 ポーズにも数パターンがあるというのも驚きだ。バッジ上に描かれる肖像は、襟から上、または胸元から上しか描かれていないので、「ポーズ」も何もないんじゃないかという気がする。何か勘違いしてるんじゃないのかと思われる。

この部分も北朝鮮ウオッチャーのコメントなのだろうか。だとしたら、もっとしっかりしろ北朝鮮ウオッチャー!

『日本の北朝鮮マニアによると、「北朝鮮の国境に近い中国側のみやげ物屋で、『バッジ、バッジ』というと、裏から何種類か出してくる。数年前は日本円で300円から4000円で買えた。最近は、観光客目当てに、中国で作られた偽物も出回っている。親子2人が並んだ希少バッジの本物なら、1万5000円前後で売買されている」という』
 北朝鮮マニア、ねえ・・・。「1万5千円前後で売買されている」って、これ、水道橋の某通商のことだろう。
 それにしても、「日本円で300〜4000円」というのは、ずいぶん幅があるなあ。
 なお、「中国で作られた偽物も出回っている」というが、これ自体は間違いではないが、偽物が登場したのは最近ではなく、かなり以前から確認されている。

『宮塚教授は「北では国民が3階級51階層に分類され、階層でバッジも違うといわれた。バッジによって、入る店が違うなどの特権がある。最近は厳密でなく、1人が何種類か使い分けるようだ」と解説する。』
このコメントも常識的で、状況からみて正しいと思われる。すくなくとも諜報機関員だなどと決めつけられるようなものでないことは確かだろう。

『前出の辺氏は「北で暮らすうち、少しでも恵まれた立場になりたいと思うのは当たり前。全国民がバッジをつけているのだから、身に染みついているのは当然。子供らも向こうにいる状況で、『なぜ、バッジをつけているのか』と問うのは酷な話」と指摘する。』
 そのとおり、と言いたい。金日成バッジをつけていることで、しかもそれによって諜報機関員だの、洗脳されてるだの、無理に帰国させるべきでないだのと、いいかげんなウワサを真に受けて、敵視するかのような態度はとるべきでない。彼らの立場を考えれば、やりたいことだけをできるわけではない事情は察してやるべきだ。

さて、産経新聞も、金日成バッジについて、力の入った記事を掲載。
『北朝鮮から一時帰国した拉致被害者は待遇やつけていたバッジなどから一般の国民とは明らかに違う“特別な階級”に所属していることが18日、専門家の指摘などで分かった』。
と、「専門家の指摘」をかりて、彼らのことを北朝鮮でも特種な存在であることを強調する。

ここでも恵谷治氏が大活躍。
『北朝鮮の社会情勢に詳しいジャーナリストの恵谷治氏によると、被害者が身につけていたバッジは「党旗章」。なびく旗の中心の円内に背広を着た故金日成主席の肖像が描かれ、左上の隅には筆とハンマーと鎌(かま)の朝鮮労働党の紋章があしらわれたデザイン。
 「北朝鮮では一九七〇年代から全国民が何らかの肖像バッジをつけるようになったが、被害者5人のものは、エリート階層を示している」(恵谷氏)という。』

あれ??夕刊フジでは、「党旗章も一般市民や大学生が着用することがあり、一概に党員とは決められない」って言ってなかった?なんで「突然エリート階級を示している」になっちゃうの、恵谷さん?

一方、産経では次のような話も載っている。
『保さんによると、18日夜、保志さんは同級生らが遊びに来た際、「金日成バッジ」をつけていなかった。保志さんは「向こう(北朝鮮)ではバッジをつけていないといられない」と話したという』。
忠誠心がどうのこうの、というより、わが国の名門私立学校における制服規定のような雰囲気を感じるのは私だけだろうか。

(2002年10月19日)