AERA 緊急増刊「北朝鮮の変貌」(No.40 9/25号)について
小泉首相の訪朝によって、今年(2002年)9月以降、北朝鮮を巡る報道は急増した。テレビ、新聞、雑誌・・・北朝鮮情報であふれかえっている。残念なのは、しばしばしょうもない間違いが見られることだ。
そんな中、AERAの緊急増刊号が出版された。題して「北朝鮮の変貌」。
北朝鮮関係情報を探していた私は、広告を見てさっそく書店に買いに行ってきた。
余談ながら、この増刊号は扶桑社の「SPA !」(10/8号)では批判のやり玉に挙げられており、「被害者家族の感情を逆撫でする増刊号発売。一体どういうセンス!?」と題して、AERA増刊号の能天気さ加減を批判。「有本さんのご両親に会うときは“お宝バッジ”を胸に着けて行けと言いたい」とコラムニスト勝谷誠彦氏のコメントを紹介した上で、「新聞社の見識を疑われる増刊号にも拘わらず回収する気配はない。建前と本音の股裂き状態が露呈しても、開き直って商売に徹するつもりのようだ」と徹底批判の構え。
・・・
だが、当サイトではこの批判についてコメントする気は全くない。
ここで取りあげるのは、SPA!が指摘する“お宝バッジ”(AERAでは“お宝グッズ”のコーナーでバッジが紹介されており、“お宝バッジ”という表現は用いられていないので念のため)に関してである。
で、肝心のAERA緊急増刊号である。
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| AERA 緊急増刊「北朝鮮の変貌」(No.40 9/25号)P64より。 3つとも完璧なニセモノ。「本物かどうかは不明」などと疑問をつける余地もない。 |
最後の最後、P64,65は見開きで「発見!?北朝鮮お宝グッズ」と題して、通貨、ポスター、切手、雑誌、等々が紹介されている。
その中でとりわけ目をひかれたのが、金日成・金正日バッジであった。
金日成バッジ、金正日バッジ、そして金親子が並んだバッジがひとつずつ。
そこには次のように書かれている。
「バッジ 中朝国境の中国側で売られている 本物かどうかは不明」。
「本物かどうかは不明・・・か」、と私はため息をついた。
不明、どころじゃない。
まるっきりニセモノである。中国製の。
写真を見ただけで、私には一目瞭然だった。
色が違う。ツクリが違う。材質が違う。要するに、本物とはかすりもしない全くのニセモノである。真贋の鑑定は、実際手にとって細部を検証する必要があるが、こいつにはそんな必要すらない。
実は、私も昨年冬(2001年)中国東北地方へ旅行に行ってきて、この手のニセモノはいやというほど見てきたのである。サンプルとして、ニセモノと知りつつ何個か入手した。ネットオークションでも見てみれば、これと同じニセモノ金バッジをしばしば見ることができる。
中には「北朝鮮からの亡命者から入手した」などともっともらしいことを書く出品者もいるほどだ。まあ、絶対ウソだとは言うつもりはない。亡命者が中国に入ってきた後にニセモノバッジを入手し、「オレが朝鮮国内から持ってきたものだ」と言って売りつけたと言うことも考えられなくもないからだ。考えにくいけど。
まあ、AERA記者も完全に信じたわけではないのだろう。「本物かどうかは不明」などと、曖昧なコメントからも、疑念がなんとなくは伝わってくる。
ただ、これらニセモノについては、コレクター筋ではすっかり「ああ、あのニセモノね」と正体がばれてしまっているため、引っ掛かる人は次第に少なくなりつつあるようだ。ただ、この記事を作った人は、少なくともこれまで北朝鮮バッジについて関心を持ってこなかった人であることが察せられる。一度見れば、まずその違いは誰でも判別できるからだ。
当サイト「金日成バッヂの世界」を開設してから、何人かの未知の方から「真贋鑑定」を依頼されたことがある。そして、私自身日本や中国で北朝鮮バッジをいろいろ見てきた経験上、ニセモノは今のところ(2002年現在)限られた種類しか作られていないらしい様子がうかがえる。いずれも中国製と断定している。
今回、AERAに掲載されたバッジは、いずれもよく知られたニセモノである。親子バッジは比較的最近出現したが、同じ種類が掃いて捨てるほど出回っているのが現状だ。
もう一言付け加えさせてもらうと、AERA目次にはこのページは『マニア垂涎「北朝鮮お宝グッズ」』とされているのだが、このページに掲載されているものでマニアがヨダレを流すようなブツはひとつとしてない。この程度のモノにはもはや見向きもしないはずだ。この程度で「お宝」と感じるのは、申し訳ないが、北朝鮮グッズにまったく無知なトーシロだけである。
この記事を見て、おおこれが、かの北朝鮮の金バッジかあ・・・と信じ込んで記事と同じバッジをホンモノと信じて手を出す人が、確実に何人かは出現するであろう。
そういう体験こそが、コレクターを鍛えていくのかもしれない。がんばってもらいたいものだ。
(2002年10月7日)