金日成バッヂ(肖像バッヂ)の実体
 
朝鮮民主主義人民共和国のシンボルともいえる「金日成バッヂ(肖像バッヂ)」。しかし、その実態は意外に不明な点が多い。
 ちまたにあふれる北朝鮮関連の通俗本の中でも、@金日成バッヂには数々の種類が存在すること、A国民は佩用を義務づけられている上、B社会階級によってバッヂの種類が定まっており、一種の身分章の役割を果たしていること、などが紹介されていたりするが、実際どんな種類が存在するのか、どういう人たちがどういうバッヂを使用するのかなどについて、正確な情報はほとんど期待できないのが現状である。
 不正確かつ断片的な情報が伝わってくるばかりで、本当はわからないことだらけなのである。そもそも、その金バッヂの実物ってどんなものだ?

わかっていること
 ほぼ確実にわかっているのは、全国民的に使用が始まった時期である。1972年4月の金日成の還暦記念がその契機とされる。その時期やバッヂの形態から見ても、中国の文化大革命期の毛沢東バッヂの影響を強く受けたことは疑いないだろう。
 だが、決定的に異なる点がある。中国においては、毛バッヂの製作、配布及び佩用規定等が、国家組織によって一元的に行われなかった。それに対し、金日成バッヂは国家組織が製作・配布を行っている(らしい)。したがって、数万種といわれる毛沢東バッヂの種類に比べると格段に少なく(現行の型では数十種程度)、様式も極めてパターン化されている。
 だが、このページの中でも紹介するように、1972年以前にも確実に金日成バッヂは存在している。これら古いタイプのバッヂについての情報はほとんどないといっていい(Orders and Medals Society of America発行の"Orders and Decolations of the Democlatic Peoples Republic of Korea",1994 では数種の初期金日成バッヂの白黒写真を掲載しているが、それについての記述には疑問がある上、ごく簡単にしか触れられていない。それでも実物の写真を見られるので貴重である)。
 ともかく、不正確な情報ばかりがあふれる現在、実物を収集し、検証することが何より不可欠である。それこそがこのささやかなサイト開設の目的である。

金日成バッヂコレクションについて
 私は、ひょんなきっかけで金日成バッヂに接してから関心を持ち、以来ここ数年収集を行ってきた。コレクションとしてはまだまだ不満足なレベルである。今後も地道な努力を続ける必要があろう。
 「どこで入手できるのか」と問われることも多いが、残念ながら、国内で入手できるところは限定されており、珍品に巡り会うことも少ない上、法外に高い値が付けられていることが多いようである。しかも堂々と販売されているものの中には中国製の真っ赤なニセモノがまかり通っている。真贋の判断は難しくはないが、知らない人は引っかかることが多いようだ。まあ、ニセモノにひっかかったところで被害額は知れているので、失敗にめげずに頑張って欲しいものである。ニセモノを知ることで、ホンモノのツクリの特徴を知ることもできる、ということもある。人生、勉強である。
 ここのコレクションのほとんどは中国で買い求めたものである。中国でもニセモノは横行しているが(そもそもニセモノは、その特徴から中国製と考えられている)、珍品を格安で入手することも可能である。北朝鮮へ旅行しても自由に金日成バッヂを買い求める機会はあまりなさそうであり(推定)、やはり経済的・人的交流のある中国が穴場であろう。
 しかし、このような状態も、実は今だけなのかもしれない。北朝鮮がソ連的に体制崩壊を迎えたあとになれば、ミリタリー業界におけるソ連・東欧モノのように、ありふれたグッズとなる可能性も高い。ただし、初期のタイプについては現存数は少ないと推定される。