北朝鮮と他の社会主義国バッヂの比較検討

 このサイトでは、主として金日成バッヂに焦点を当て検証を行ってきたが、忘れてはならない点がある。

 北朝鮮が極めて異質な国であるため、日本ではつい、北朝鮮で人々が身に帯びているバッヂの存在を特殊な存在ととらえがちである。あるいはその意味を深読みしすぎである。果たしてそのような見方は妥当なのであろうか。
 そのことはこのサイトの「緊急掲載! 北朝鮮報道に登場した北朝鮮バッジについて」でも指摘してきた。

 多くの社会主義国では、指導者の肖像のついたバッヂを身に帯びること自体は、ごくありふれた習慣である。北朝鮮ではそのありようがやや独自の発展を遂げたということはできるものの、決して独自に発生したものではない事実を、ハッキリと認識しなければならない。
 北朝鮮でも、それ以外の社会主義諸国でも、ソ連に倣った社会制度、組織形態を導入した結果、バッヂにおいてもソ連のデザインを採用して、それぞれのバッヂが作られていった。したがって、直接そのバッヂがなんであるかわからなくても、バッヂの形態からおおよそ類推することができることも多い。

 北朝鮮を理解するには、特に関連の深いソ連や中国などとの比較は不可欠である。バッヂの検証でも同様だ。しかし、現在の日本のいわゆる「北朝鮮通」の人たちの中には、北朝鮮のことしか視野にないため、とんでもない考え違いをしている人が少なくない。
 まあ、ここはバッヂ専門サイトなので、守備範囲外の指摘はしないことにしておくが、例えば「金日成社会主義青年同盟バッヂ」をいまだに「扇形のバッヂ」などと堂々と権威者ぶって書く人がいて、それが通用してしまったりするのでいやになる。扇じゃなくて、旗です。どうしてそんな間違いをするかというと、他の社会主義圏の青年組織のバッヂがどのようなものであるか全く無知であるからにほかならない。こんなことでは、ダメである。
 たしかに、一昔前までは、社会主義圏の国々は、我々日本人にとってはるか遠い存在であった。旅行で入国するにも手間がかかる上に数々の制約に縛られ、また日本で調べようにも資料も情報も限られていた。それでもそれらの国々に強い関心を持つ人たちが、限られた不正確な情報を元に考察し、その結果として様々な誤解や勘違いを膨らませてしまったことは、やむを得ないであろう。だが、そのような時代はすでに去った。かの国々ついて、日本にいながらにして多様な情報を得ることが容易になった。もうそろそろ、あらぬ妄想をふくらませるだけで満足する状態から脱してもよいのではないか。北朝鮮についても同様である。いまだに一次資料は得にくい状態ではあるが、様々な形で一気に情報が増加したのは間違いない。

 ・・・つい脱線してしまったが、他の社会主義国のバッヂとの比較を実際行ってみよう。手元にある限られたバッヂの中から探し出したもので、まだまだ多くの国々のバッヂとの比較をしてみたいものである。

 なお、ここに挙げた以外のピオネール、コムソモールバッヂを探しています。 「ほかにもこんなのがありまっせ」という方、情報お寄せください。とくにアフリカの社会主義国におけるそれらのバッヂとか、関心あります。


1 ピオネール(少年団)バッヂ
 ピオネールは、ソ連ではだいたい10〜15歳の少年少女を対象とした組織で、どの国のピオネール組織でも、赤いネッカチーフと炎をかたどったバッヂがそのシンボルである。北朝鮮でも少年団の子供たちは赤いネッカチーフを首に巻いているが、中国でも同じ光景をごく普通に目にすることができる。
 各国のバッヂでは、三叉に描かれた炎、5角星、そして標語「備えよ常に」などに共通点を見ることができる。

ソ連ピオネールバッヂ3つ。左側が古いタイプ。一番左は銅製、真ん中と右はアルミ製。古いものでは槌鎌が描かれていたのが、より新しくなるとレーニン肖像が採用される。「備えよ常に」とある。
一番左のものが一番出来が良い。小さいながらも、槌鎌や標語リボンの部分がちゃんと立体的に仕上がっており、七宝も鮮明で、デザイン的にも洗練されたものを感じさせる。一番右になると、もはやレーニン肖像をレリーフにするのもやめ、白のペイントで済ませてしまっており、安っぽさすら感じさせる。
モンゴル。
両方とも銅製。左は七宝、右はペイント。
ソ連のパターンを考えると、左の方が古いと推測される。
国章であるソヨンボからスヘバートル?の肖像へ変化したと考えられる。
ブルガリア。中央の肖像は
もちろんディミトロフ。小さいながらも肖像部の出来はなかなか良い。
アルバニア。
中央に本がある。下には「PIONIERET ENVERIT」とある。つづりから連想するに、アルバニア指導者のエンベル・ホッジャ(Enver Hoxha)の名前を冠して「エンベル少年団」かも。アルミ製。
割と新しいモノと見える(社会主義時代末期?)が、ソ連を修正主義と罵倒して敵対したアルバニアでさえ、バッヂの類似性は維持されたようである。ちょっと感慨深いものがある。
ただ、出来は非常に良くない・・・。
そして、北朝鮮。
他の国の意匠とやや異なるが、炎や五角星がしっかり描かれている。炎の部分の赤・黄の七宝グラデーションの仕上がりはなかなか美しい。これはやや古いタイプで、銅製に七宝仕上げである。より新しいアルミタイプのものも確認されている。
国旗色に描かれた本?の部分に、「常に準備せよ」と書いてある。

2 コムソモール(青年団)バッヂ
 ソ連では16〜23歳を対象とした青年組織で、「共産主義青年団」と訳される。

 北朝鮮における「金日成社会主義青年同盟」とはどのような組織か。「北朝鮮の現状(ラヂオプレス、1998年)」では次のような説明がある。
「1946年1月17日に結成された「北朝鮮民主青年同盟」が、51年1月17日「朝鮮民主青年同盟」に、ついで64年5月15日「朝鮮社会主義青年同盟」に改称。96年1月の社労青代表大会で「金日成社会主義青年同盟」に改称。朝鮮労働党と政府の政策を実行し、各階層の青年を祖国の平和的統一の達成と社会主義建設に組織・動員することを基本任務としている。1946年6月24日世界民主青年連盟に加盟。中央委員会の下に、道、市、郡に下部組織を持っている。また、少年団(1946年6月6日創立)を組織し、その活動を指導している。」

ソ連。左は40年代のバッヂか。銅に七宝仕上げ。右は70年代?のバッヂでアルミ製。ここでもピオネールと同様、レーニン肖像への変化が見られる。 モンゴル革命青年同盟。アルミ製。
やや小型で銅製のものもある。
ブルガリア。
ディミトロフの肖像。
中国共産主義青年団の入団記念章。これはやや古いタイプで、ソ連のものに酷似している。50年代末〜60年代初期と推測される。銅製でペイント仕上げ。なお、新しい共青団バッヂは円型で、デザインも全く異なる。 これが北朝鮮の金日成社会主義青年同盟バッヂ。「青年前衛」とある。
旗のなびき方はその他の国とそっくりなのがよくわかるだろう。金日成肖像は、洋服ネクタイ姿と人民服姿がある。

3 スポーツバッヂ
 ここにあげたものは、軍関係のスポーツ記念章と推定される。赤い五角星の中に、疾走する短パン・ランニングシャツ姿の男性という意匠が酷似しており、興味をひかれる。

ソ連。
国名を記した赤旗、歯車、五角星、ゴールリボンを切る人物、下の植物の葉は月桂樹?という意匠。
ブルガリア。
麦穂と歯車、五角星、人物、国旗。
モンゴル。
国名を記した赤旗、五角星、弓矢、月桂樹。大きく弓矢が描かれているあたり、モンゴルのスポーツ文化が現れているようでおもしろい。一等賞記念。
北朝鮮。
国旗、歯車と稲穂、五角星、ゴールリボンを切る人物。
これも一等賞記念である。